安倍晴明の登場【鉄輪】
安倍晴明の登場する曲はたくさんありそうな漢字がしますが
現在、上演される曲では能「鉄輪」一曲だけです。
その中に「九曜、七星、二十八宿」という言葉があります。
能の稽古には直接関係ない部分ですが、こういう物語の背景はものすごく気になるものです。
九曜、も七曜も七星も九星もあるので天の時をみているのだったら九星と七曜八宿か、、とも思いながら「宿曜経」と中国星座の天文図を見てみます。
安倍晴明が実際にはどんな祝詞を奏上したのかはわかりませんが古神道の祝詞の中で二十八宿が出てくるものもあります。稲荷大神秘文、、狐に関係のある安倍晴明だけに想像が膨らみます。
稲荷大神秘文
夫それ神かみは唯一ゆいいつにして御形みかたち無なし虚きょにして霊れい有あり天地あめつち開闢ひらけて此方このかた國常立尊くにとこたちのみことを拝はいし奉まつれば天てんに次玉つくたま地ちに次玉つくたま人ひとに次玉やどるたま豊受とようけの神かみの流ながれを宇賀之御魂命うがのみたまのみことと生なり出いで給たまふ永ながく神納しんのう成就じょうじゅ為なさしめ給たまへば天てんに次玉つくたま地ちに次玉つくたま人ひとに次玉やどるたま御末おんみすへを請うけ信しんずれば天てん狐こ地ち狐こ空くう狐こ赤しゃく狐こ白びゃく狐こ稲荷いなりの八はち霊れい五ご狐この神かみの光ひかりの玉たまなれば誰だれも信しんずべし心願しんがんを以もって空くう界かい蓮来れんらい高こう空くうの玉たま野や狐この神鏡しんきょう位くらいを改あらため神かん寶たからを以もって七曜しちよう九星きゅうせい二十八宿にじゅうはっしゅく當目星とめぼし有ある程ほどの星ほし私わたくしを親したしむ家いへを守護しゅごし年月ねんげつ日時じつじ災わざわひ無なく夜よの守まもり日ひの守まもり大おほい成なる哉かな賢けん成なる哉かな稲荷いなり秘文ひもん謹つつしみ白まをす
この鉄輪の物語、私の勝手な解釈では「班女」「花子」のあとにこの「鉄輪」をいれて「隅田川」につながる物語だと想像してます。
年代もちょうど970年前後、狂言「花子」の嫉妬深い妻と、「鉄輪」の女は同一人物ではないかと想像が膨らみます。
能は台本の本分にも固有名詞がはっきりと書かれているわけではないので、違う意見があってもまた面白いものです。さまざまな見方で想像して楽しむところがいいですね。
江戸名所図会では吉田惟房という人が子宝祈願に行ったときに花子とであうと書かれてあるのですがこの大本は何に書いてあるのか確認してません。
江戸時代には有名なお話だったようです。
そう思ってみると班女の扇というのも子ども(梅若丸)の象徴のような気がしてきます。
春に子宝祈願にいって出会った人に子どもができていたので一緒になる。
本妻は別にいて非常に嫉妬深い
そんな関連を作っていくと点が線になり面になり立体になり、自分の中の台本の記憶が明確になっていきます。
台本を早く覚えたい方は、言葉を反復して覚えるよりも、想像力を働かせて立体としてみてみると頭のなかで映画のように登場人物が動き出して楽しいものです。能は関連しているものが多いので能が刺激されますね。感受性のアンテナを高めたい方にはおすすめの芸能です。
やはり九曜、七星、二十八宿だった
後日、密教関係の書物や儀式など調べてみたところ生まれた宿の災いを転じ換える儀式が細かく書かれているものがありました。その時の祈祷の文言には「九曜、七星、二十八宿」となっていました。
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