垂れ下がる枝を眺める西行の心の中が丸見えになる
ごきげんよう!
能楽師 森澤勇司です。
本日も心を磨く能の言葉をお届けします!?
「浮世とみるも山とみるも、ただその人の心にあり」
6月6日日経新聞主催の能楽鑑賞会がありました。
狂言「伊文字」と能「西行桜」
野村萬斎さんはじめ一線の演者を全国から抜擢しているのはさすが日経新聞です。パリ公演でも能舞台を日本から持って行くほど能楽の普及に力を入れて頂いてます。
さて美術でも芸術でも「鑑賞」という言葉をよく使います。
「見物」とは少々目的が違います。
今日はその「鑑賞」についての話題です。
その前に「西行桜」曲について触れておきます。
この曲は、人の心が現実を作っているという事がテーマの一つです。
「浮世と見るも、山と見るも。ただその人の心にあり。」
山の中の庵に移り住んだ西行に桜の精が語りかける場面です。
邪魔するものが多い世の中、修行に適した静かな場所、どちらも自分の心が作り出したものでしかない。
西行法師が人を避け、移り住んだ西山には桜の古木がありました。その花が評判になり都から多くの花見客が訪れます。
騒々しいのは花のせいだという歌を詠んでいると桜の精が現れます。
「浮世と見るも、山と見るも。ただその人の心にあり。」
自分の心のざわつきが、騒々しさを感じさせる、仲間に入りたいと思う心が、人の多さを感じさせる。
桜の精というと若い女性を思い浮かべる人が多いのですが、この能は西行の作り出した心の世界です。
西行の年上の経験者の意見しか聞けない心を表現するために世阿弥は桜を老人の姿としたのかもしれません。
これも心が作り出した世界、自分とは別のものが現れるようでいて、自分の心の中の気になっているところが桜の精になり夢の中に現れる。
草木には心がない、あるのは人の心
すべては西行の心の中の投影という見方も味わい深いものです。
最後になりますが「鑑賞」という意味のことです。
鑑は鏡です。賞は美点を見つけること
つまり、鏡に映して美点を見つける事を鑑賞と言います。
芸術を美しいと思う事は、「私の心に美しい部分がある」と確認するためのものです。
発見は自分の心の中であって、作品評価の批評よりも鑑賞する方が心が健康になります。
そんな鑑賞の意味は知らなくても「キレイだな」と感じてたい方は、自然に綺麗なものを選んで元気になっているわけです。
8月3日には国立能楽堂夏休み企画で親子で能楽体験ができる催しがあります。
家の中でも近くの花でもキレイだなと思うもをたくさん見つけてくださいね。
◆「浮世とみるも山とみるもただその人の心にあり」西行桜より
最後まで読んでいただき
有難うございます!!
さらなる幸運を
お祈りしています。
◆舞台出演予定
◆今月のイベント
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◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆
森澤勇司
重要無形文化財能楽保持者
【理念】
天下安全
諸人快楽
衆人愛敬
寿福増長
【行動の指針】
「ぜひ」と言える社会
約束できる仲間
道具が揃った環境
目的が明確な生活
【座右の銘】
理想の人生は言葉が創る
【能楽生活】
【NohTube】
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森澤勇司(もりさわゆうじ)
能楽師小鼓方
1967年東京都生まれ。
テンプル大学在学中に見たこともない能楽界に入門し32歳で独立。
2000番以上の舞台に出演している。
43歳で脳梗塞で入院、
退院後、うつ状態克服のため心理学、脳科学を学ぶ。
復帰後は古典的な能楽公演を中心に活動している。
著書『ビジネス番「風姿花伝」の教え』
明治天皇生誕150年奉納能、
映画「失楽園」、大河ドラマ「秀吉」に
能楽師として出演。
2014年 重要無形文化財能楽保持者に選出される
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