能と『易経』

朝活は『春秋左氏伝』『日本書紀』孝徳天皇『聖書』Genesis

今日は『左伝』『日本書紀』共に『易経』の引用がある場所でした。

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『春秋左氏伝』荘公二十二年(紀元前672)

陳候が敬仲について筮を立てさせたところ「観」の卦が「否」の卦に変ずるとでて次のように判じた。

「国の光を観る、王に賓たるに用ふるに利し」

このかたはきっと陳にかわって国をもたれるでしょう。この土地ではなく他国で、本人ではなく子孫が。それは光は遠方から輝いてくるものだからです。

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このあと易占の読み解きが語られる場面です。
この「観」の四爻は「観光」の語源にもなっているので384ある爻のなかでも広く知られています。

この時の占い方がよくわかります。
紀元前の易占が現在まであまり変わっていないことが驚きです。読み解きの具体例があり面白い記述です。

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『日本書紀』
易に曰へらく『上を損して下を益す。節ふを制度を以てして財を傷らざれ。民を害はざれ』といえり
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こちらは風雷益からの引用です。身分の低い人を率先して豊かにするような象徴です。

『日本書紀』では占いではなく慣用句として引用されています。

昨今は『易経』の本も人気で種類が多くなりました。ほとんどは占いか教訓的な卦の解釈が多いように思います。

日本では「大化」から「令和」まで250ある元号の一割以上『易経』由来のものがあります。「明治」も「大正」も『易経』由来です。

神社や日本の伝統文化に『易経』はかなり深く関わっています。お米と水のように融合しているので『易経』だとも思わないくらい染み込んでいる。

能と『易経』の関わりも多数あります。わかりやすい一例は歌舞伎「勧進帳」の原曲、能「安宅(あたか)」の最後「虎の尾を踏み」という言葉です。

これは「履」卦の四爻「履虎尾。愬愬終吉」
「虎の尾をふむ。さくさくたれば終に吉」という爻辞の由来です。

危険な目に遭うが助かるという意味です。

物語のあらすじも「履」卦の爻辞にそっている流れです。

その外、『易経』と深く繋がっているとおもわれる作品は下記です。

「羽衣」「天鼓」「善知鳥」「大原御幸」「柏崎」「阿漕」「葵上」「実盛」、、、、まだまだいろいろあります。

易の爻辞とあらすじ、使われている単語など、、『易経』の爻辞を骨組みにして物語を作ったのか。たまたまの偶然なのか。

こういうものはこじつけ解釈はよくないのですが共通点は多いものです。

※画像はAIで生成しました。

※日本文化の土台としての『易経』は月三回ほどズームで開催してます。

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森澤勇司(もりさわゆうじ) 能楽師小鼓方 1967年東京都生まれ。 テンプル大学在学中に見たこともない能楽界に入門し32歳で独立。 2000番以上の舞台に出演している。 43歳で脳梗塞で入院、 退院後、うつ状態克服のため心理学、脳科学を学ぶ。 復帰後は古典的な能楽公演を中心に活動している。 著書『ビジネス番「風姿花伝」の教え』 明治天皇生誕150年奉納能、 映画「失楽園」、大河ドラマ「秀吉」に 能楽師として出演。 2014年 重要無形文化財能楽保持者に選出される

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曲目目次

あ行 か行 さ行 た行 な/は行 ま/や/ら行
(あ)
藍染川

葵上
阿漕
芦刈
安宅
安達原
敦盛
海士
海人
嵐山
蟻通
淡路

(い)
碇潜

生田敦盛
一角仙人
井筒
岩舟

(う)
鵜飼

浮舟
雨月
右近
歌占
善知鳥
采女

梅枝
雲林院
(え)
江口

江野島

烏帽子折
絵馬
(お)
老松

大江山
鸚鵡小町
大社

小塩
姨捨
大原御幸
小原御幸
女郎花
大蛇
(か)
杜若

景清
花月
柏崎
春日龍神
合浦
葛城
鉄輪
兼平
賀茂
通小町
邯鄲
咸陽宮
(き)
菊慈童

木曾

清経
金札
(く)
草薙
国栖

楠露
九世戸
熊坂
鞍馬天狗
車僧
呉服
黒塚

(け)
現在七面

源氏供養
玄象
絃上
月宮殿

(こ)
恋重荷

項羽
皇帝
高野物狂
小鍛治
小督
小袖曽我
胡蝶

(さ)
西行桜
逆矛

桜川
実盛
三笑

(し)
志賀
七騎落
自然居士
石橋
舎利
俊寛
春栄
俊成忠度
鍾馗
昭君
猩々
正尊
白鬚
代主

(す)
須磨源氏
隅田川
住吉詣

(せ)
西王母
誓願寺
善界
是界
是我意
関寺小町
殺生石
接待
蝉丸
禅師曽我
千手

(そ)
草子洗小町
草紙洗
卒都婆小町
(た)
大会
大典
大般若
大仏供養
大瓶猩々
第六天
當麻
高砂
竹雪
忠信
忠度
龍田
谷行
玉鬘
玉葛
玉井
田村

(ち)
竹生島
張良

(つ)
土蜘蛛
土車
経正
経政
鶴亀
(て)
定家
天鼓

(と)
東岸居士
道成寺
唐船
東方朔
東北
道明寺

木賊
知章

朝長
鳥追船
鳥追
(な)
仲光
難波
奈良詣
(に)
錦木
錦戸
(ぬ)

(ね)
寝覚
(の)
野宮
野守

(は)
白楽天
羽衣
半蔀
橋弁慶
芭蕉
鉢木
花筐
班女

(ひ)
飛雲
檜垣
雲雀山
氷室
百万

(ふ)
富士太鼓
二人静

藤戸
船橋
船弁慶
(ほ)
放下僧
放生川
仏原
(ま)
巻絹
枕慈童
枕慈童(カ
松風
松虫
松山鏡
満仲
(み)
三井寺

通盛
水無月祓
身延
三輪
(む)
六浦
室君
(め)
和布刈
(も)
望月
求塚
紅葉狩
盛久
(や)
屋島
八島
山姥
(ゆ)
夕顔
遊行柳
弓八幡
熊野
湯谷
(よ)
夜討曽我
楊貴妃
養老
吉野静
吉野天人
頼政
弱法師

(ら)

羅生門
(り)
龍虎
輪蔵
(ろ)
籠太鼓