水天宮と易経【大原御幸】
安産祈願で有名な水天宮の御祭神をご存知でしょうか。
古事記で一番初めに登用する神様、天之御中主之神です。
安徳天皇、その母 建礼門院、その母で平清盛の正妻 二位の尼が祀られています。
能楽「大原御幸」では大原の寂光院にいる建礼門院を後白河法皇が御幸する物語が展開されます。
総本宮はこちら
総本宮の御祭神は天之御中主之神、高倉平中宮(建礼門院)、二位の尼(清盛の妻 時子)となっています。
大原御幸の主人公でもある建礼門院徳子さま(1155〜1214)には兄弟がいます。
宗盛(1147〜)、知盛(1152〜)、重衡(1157〜)
壇ノ浦の合戦は1185年ですから当時の年齢は下記のようです。
清盛(1118〜1181)すでに死去
時子59歳(1126〜)
宗盛38歳 (能「熊野」金春禅竹?作に登場)
徳子30歳 (能「大原御幸」金春禅竹?作に登場)
知盛33歳 (能「船弁慶」観世信光作に登場)
重衡28歳 (能「千手」金春禅竹作に登場)
安徳天皇8歳(1178〜)
※金春禅竹(1405〜1471)
※観世信光(1435〜1516)または(1450〜1516)
平家物語 灌頂巻では御幸は文治2年4月下旬となっているので1186年
※壇ノ浦の合戦4ヶ月後には大きな地震も記録されています。
能楽の作者は諸説ありますのがすべて現在でも上演されている人気曲です。
東京の水天宮
敷地内に能楽に縁のある宝生弁財天が祀られいるのも能楽とのご縁を感じます。
大原御幸について詳しく知りたい方は「能楽 大原御幸」で検索するといろいろ見つかると思います。
ごく簡単にしてしまうと、平家一門の弔いのために寂光院にいる建礼門院を後白河法皇が尋ねるという物語です。
尋ねてくるのはこの方々です。お供の方もいるのでだいぶ人数はいたと思いますが名前のある登場人物は
後白河法皇(1172〜
萬里小路中納言このなまえだと初代(1225〜も生まれていないので謎の登場人物
大臣は名前はないが官僚の方
能はこの3名とお供の一行が寂光院にやってきます。
実際に平家物語の中では
徳大寺→藤原実定(1139〜)
花山院→藤原兼雅(1148〜)
土御門→源通親(1149〜)
その他、公卿6名、殿上人8名、北面の武士数名
結構大人数での訪問です。
年代の違う登場人物が入っているのはあえて別の意味をもたせたのが、資料がなかったからなのかそのあたりは推測しかないので人それぞれの意見があると思います。
初九。需于郊。利用恆。无咎。象曰、需于郊、不犯難行也。利用恆、无咎、未失常也。
九二。需于沙。小有言、終吉。象曰、需于沙、衍在中也。雖小有言、以終吉也。
九三。需于泥。致冦至。象曰、需于泥、災在外也。自我致寇、敬愼不敗也。
六四。需于血。出自穴。象曰、需于血、順以聽也。
九五。需于酒食。貞吉。象曰、酒食貞吉、以中正也。
上六。入于穴。有不速之客三人來。敬之終吉。
水天宮という名前から連想する易経の水天需を見てみると
上爻に「思いがけない来客が3名ある」というようなことが記されています。
能楽の作品には易経の方位が織り込まれている曲は多いようですから、
何かのときに「上皇、思いがけない来客」と思いついてしまったのかもしれないですね。
とんでも論的に解釈してみると
需有孚。光亨。貞吉。利渉大川。
光、大という文字から大原、寂光院が連想されます。
水天需は「待つ」ということがテーマになります。
需、有孚。光亨。貞吉。利渉大川。
- 初九、需于郊。利用恒。无咎。
- 九二、需于沙。小有言、終吉。
- 九三、需于泥。致寇至。
- 六四、需于血。出自穴。
- 九五、需于酒食。貞吉。
- 上六、入于穴。有不速之客三人来。敬之終吉。
初爻 郊外でまつ→寂光院
二爻 砂浜でまつ→壇ノ浦の合戦、船の上
三爻 さらに水際に近いところでまつ、進めば凶→入水
四爻 血を流すような状態、穴より出ず→源氏の武士に引き上げられる
五爻(御幸) 飲んだり食べたりして待つ→山にワラビ採り
上爻(上皇) 思いがけない来客3名→後白河法皇、萬里小路中納言、大臣
とんでも論のこじつけは無理がありますし鋤ではないので、
名前から頭に浮かんできたこととして読んでいただけると幸いです。
古典というのはいろいろな味方ができるから面白いのであって決めつけは全く面白くありません。
別の見方、視点、視座、視野がかわれば全く別な風景が見えてきます。
音楽的な視点だったり、韻を踏んでいたり、
原点からあえて外してフィクションを入れていたり、
はたまた、ダビンチコードのように暗号を読んでみてもいいと思います。
易経を読んでいたら思いついてしまったという視座で
頭に浮かんだことを綴ってみました。
水天宮のお参りの際には宝生弁財天にて
宝生流の「大原御幸」を小さい声で奉納させていただきました。
面白い読み方があったらぜひ教えてください。
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