東南に風立って西北に雲静かならず【熊坂】
かなりマニアックに能の詞章を易の視点で見てみました。
古典の文章というのは一つの視点だけではなく
表面的な表現、裏にある意味などどれが正解というよりも
多様な視点で楽しめるところが魅力です。
ですから正誤の議論で一つに決めようとするのは、かなり無理があります。
明らかに違うとすると、解釈の違いではなく
もともと持っていた智識のが間違っている場合が多いように思います。
さて本題の「熊坂」の話題です。
能「熊坂」の後半で熊坂長範が舞台にはいりすぐに謡う言葉
「東南に風立って西北に雲静かならず」
そのまま聞いていれば東南から風が吹いてきて西北の雲が動いているような風景ですが、、
易学の方位で見るとこんな図になります。
東南に「風」そして西北に「天」というのは易のもとになる九星の配置でもあります。
熊坂長範が現れる現実的な方位というよりも
これから強盗をしようという行為が「天」に背く行為という
一つの表現ではないかと解釈してみました。
殺生、偸盗、邪淫は仏の十戒の中でも身体で作る罪と分類されています。
盗みは相手の損害と言うよりは天に背く行為なのです。
法で裁かれるのではなく天に裁かれる種類の罪です。
南
風 | 火 | 地 |
雷 | 澤 | |
山 | 水 | 天 |
北
「こづえ木の間や騒ぐらん」
木 | 火 | 土 |
木 | 土 | 金 |
土 | 水 | 金 |
「さても三條の吉次、信高とて黄金を商う商人あって」
熊坂は風が吹き木の間が騒がしい、、「木」
商人、吉次信高は黄金「金」
これも対極にあります。
四書は、「大学」「中庸」「論語」「孟子」、
五経は、「詩経」「書経」「礼記」「易 経」「春秋」
能のできた時代にはこのあたりは一般常識のようなものでしょうから
今よりも日常jに密着したものだったように思います。
喜多流能楽師 塩津圭介さんの仕舞「熊坂」
※仕舞→装束を付けずに紋付きで舞う、動画は音声が後ろで流れています。
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