【絶対音感】最相 葉月 著
vol.294 2011年7月5日配信
『絶対音感』
最相 葉月 著
新潮文庫
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「絶対音感というものが一言でいい表すことの
できない複雑なニュアンスを持つものだということは
返送された行間に読みとることができた。」
本文より
▼「同じ音がわかりますか?」
天才音楽家には必須と思われている
絶対音感について考察した一冊です。
数多くの音楽家への取材やインタビューにより
絶対音感を持った人々がどのように音楽を
とらえているのかを様々な角度から切り込んでいます。
ある程度のずれを許容できる人できない人様々です。
絶対音階がついたというレベルで
トレーニングをやめてしまうと
家のピアノが物差しになるだけの
ものでしかないようです。
絶対音感というと物凄い天才のようなイメージですが
幼少期に会得しても音楽とは違う仕事をしている人も
多いようです。
絶対音感を目で見える物に置き換えてみると
フリーハンドで直線を書ける才能に
近いのではないかと思います。
紙に柄があっても罫線があっても
関係なく定規で引いたような直線が
書ける才能と絶対音感は似ている
と感じました。
だからこうした直線の感覚があって
どんな角度の線でも思い通りに書ける
人がいたとしてこの人が書道の大家に
なれるかというとちょっと違いますよね。
それでもその才能により
直線がわかるのですから、
それと比べて感動できる線はどういう線かとか
自分はどういう曲線が好きだという所まで
考えていくと書道の大家になれる可能性も
あるとおもいます。
曲線自体が気持ち悪くて
しょうがないと感じるのと
同じ絶対音感の持ち主は音楽を
聴いても素材としか思えないかもしれませんね。
ぜひ読んでください。
_____
▼編集後記
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
この本を読んでみた感想は、普通の人でも
絶対音感以上の複雑な事をしているということです。
ある音を聞いてその音階がわかるというのは
同じ音が声か楽器で再生できるというのと同時に
その音の「名前」という情報が加わっているというのが
絶対音感の持ち主の最大の特徴だと思います。
聞いた音と同じ音階を再生できる人は
数多く存在します。
それがなんという名前かは言えるためには
絶対音感というトレーニングが必要なようです。
日常的に音楽とかかわりがない方でも
意外に複雑な事をしていて
ほとんどの人が
「箸」と「橋」を聞き分け文字にする
ことが出来るというのもその一つです。
「ha」という音に「は」という文字を
当てはめて「ha」と「shi」の音程さも聞き分け
「箸」という和音か「橋」という和音かが認識できて
文字にも書けるのです。
これは相対音感だと言ってしまえば
それまでですが音痴と言われる人も
日本語は話せているのですから
音は聞き分けているはずです。
味覚、視覚、など様々な感覚がある中で
なぜ音の高さだけが絶対値の判別が可能なのか
興味がわく本でした。
絶対色感、絶対味覚、絶対リズム感、絶対触感など
トレーニングで身につけることは可能なのでしょうか。
「同じ音がわかりますか?」
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