「相槌」を打つ
「相槌」を打つ
今日は「女性の応援📣」というテーマでの講座打合せ。それでは女性のお願いを叶える神様のお話にしようと思っていたのですが、、ああなってこうなって、、コンパクトにどこを切り取ったら良いかと考えていました。
そうして椅子に座ったら電話がありました。
『2026年2月15日「小鍛冶(こかじ)」の出演お願いします』
「はい、喜んで😃」
というわけで今日のテーマは「相槌」にすることにしました。
この「小鍛冶」は刀鍛冶の伝説です。
登場する宗近は国立博物館にも現物がある平安時代の名工です。
ある時、一条天皇は夢のメッセージで三条に住む小鍛冶 宗近に剣の製作を依頼します。
お使いの勅使は橘 道成が担当です。
天皇から依頼された剣を製作するには自分と互角の力を持つ「相槌」をうつ職人がいないのでできないと宗近は断り続けます。
勅使も返事をそのまま了承はしてくれません。
「天皇は夢の告げが実現することを期待しておられますよ」
職人はいない、、依頼は断れない、、
困り果てた宗近は、稲荷明神に参拝に行きます。
そこに現れる不思議な少年
少年「あなた、いま帝から剣の製作依頼が来ましたよね〜」
宗近「いま頂いた依頼をなぜ知ってるのですか??」
「壁に耳、岩の物言う世の中に」
そして中国の漢王、煬帝の時代の剣の徳、草薙の剣の謂れを語ります。
そして、それらに匹敵する剣を作るため祭壇を作り待っているように宗近に伝え、少年はどこかに行ってしまいます。
宗近は祭壇を作り祝詞をあげます。
刀をつくる職業への敬意、イザナギ、イザナミが国づくりの時の矛を作った職人、伝来したペルシャへの敬意、今まで技術を伝承してくれた人への感謝を相乗し願います。自分の功績ではなく霊力のある剣を作るために願いを聞き入れてくれるよう祈ります。
そこに稲荷明神の使いの狐がやってきます。そして稲荷明神の使いは宗近に弟子入りの礼を尽くし「相槌」をうち剣を完成させます。
そして完成した剣の表に「宗近」裏に「小狐」と銘を打ち勅使に「これが天の叢雲です」といって手渡します。そして手伝った狐は雲に乗って飛んでいってしまうという物語です。
この約80年後、壇ノ浦の合戦になり平安時代は終了します。この時に安徳天皇と共に壇ノ浦に沈んだ三種の神器は形代(レプリカ)だったという説もあります。最後の「天の叢雲ともこれなれや」という一文が宗近作だったのかと想像が広がります。
また手伝った狐も祭壇に上がる時に「童男(とうなん)、壇の上に上り」といいます。前半に登場するのが少年(童子)なので、聞き流してしまえばそれを言っているのだと感じるところです。『日本書紀』『古事記』を知っている人にとっては「童男」はヤマトタケル尊の名前「童男(おぐな)」とつながっていることがわかります。
またスサノウが八岐大蛇を退治した時の剣が天叢雲剣です。この天叢雲剣が倭姫命からヤマトタケル尊に託され、草薙剣と名前がかわります。
弁慶の長刀も宗近作という伝説もあります。また宗近の住居跡近くに祀られている「合槌神社」の隣には世界的友愛団体の集会所があります。
能「小鍛冶」は神話から現代の都市伝説までさまざまな古史古伝のハブになるような作品です。
そして、同じ目的を持って切磋琢磨するとき必要なのは「相槌」です。
「そうじゃないでしょ!」と頭ごなしにぶつかったり、思ってもいない事柄に同意するのは「相槌」ではありません。
刀を鍛えるように「目的を共有」しお互いの力を発揮するのが「相槌」を打つことになります。
※画像はAIで生成しました。現代風な刀匠(小鍛冶)です。
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