秘伝書が伝える心の病
秘伝書が伝える心の病
少し調子悪かったので「病」について書き残してある本を開いてみました。
幸正能(まさよし)
天文8年(1539)ー寛永3年(1626)年、享年88歳
当流の2代目、37歳の時、足利義昭の意向で安芸国に出向し毛利輝元の小鼓指南をした 能楽師小鼓方
当時としては長生きです。昔は平均寿命が短いので日本人全部が短命と思われていますが長寿の人も結構います。
「鼓の病と申す事は、手のうちたき事、しだるき事、早き事、是三色が病にて候よし申し伝え候。」『幸正能口伝書』より
▶︎鼓の病→手のうちたき事、ここはさまざまな解釈がされる一文です。手組みが邪魔なこと、なにか変わったことをしたくなってしまうことも含まれるかもしれません。
しだるき事は、リズムのもたれ、早き事はリズムが走る、コケる。
じゃあどうするかは実際、小鼓をもってした方がわかりやすいので興味ある方はぜひ稽古場に😃
ここは深掘りせずにもう一つ
柳生宗矩
元亀2年(1571)ー正保3年(1646)
徳川家光の兵法指南役をつとめた人、柳生新陰流宗家、時代劇の柳生十兵衛の父。
一、病気の事
①勝たんと一筋におもふ病
②兵法つかはむと一筋におもふ病
③習のたけを出さんと一筋におもふ病
④(病に)かからんと一筋におもふ病
⑤(治るのを)またんとばかりおもふ病
⑥病をさらんと一筋におもひかたまりたる病
何事も心の一筋にとどまりたるを病とする也。
この様々の病、皆、人の心にあるなれば、これらの病をさって心を調ふる事也。『兵法家伝書』より
両方に対策も書いてあるのが、やはり秘伝書です。
こころの病のようなものですが、こうしたことは現実的に生活に全く影響しないはずはありません。
せっかちな人は生活がせっかちなので、楽器の演奏だけ天才的とはなかなか思いにくいものです。
兵法の病にしても、現代の病気にかからないように自然派にこだわりすぎる病もあり、心が整えば体も整うと主張して近代医療を受け入れず「またんとばかりおもふ病」にかかっている人もいます。
適切な治療や改善策を受け入れられなくなったり、柳生宗矩のいうように「一筋にとどまりたる」心の硬さが実際の体の不調を増長されていくのだろうと思います。
かといっていいと言われたものを全部試して酷くなることもあり適切な健康状態をイメージできなくなることが本当の病かもしれません。
世阿弥は「能の出来過ぎる病」を語っています。
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091 作り込み過ぎてはいけない
創意工夫にも注意すべきことがある。それは、どうにかして面白くしようと作り込み過ぎることだ。作り込み過ぎると、見ている相手の心に隙間がなくなり、少しマンネリ感を感じてしまうことがある。演じる側も見る側も冷静さを失い、盛り上げたい山場がぼやけて荒っぽくなってしまうのだ。これは「出来過ぎ」と呼ばれ、一種の病といえる。 全体に控えめにし、ここぞという山場を決めよう。そうすることで進行するごとに感動が深まる仕事ができるだろう。 『花鏡』
『超訳 世阿弥』より
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心当たりのある「病」ありますか??
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