「言霊」と「言挙げ」

「言霊」と「言挙げ」

今朝は『万葉集』の話題を聞いたので万葉集をパラパラ、、
そして目に止まった「言霊」と「言挙げ」をお題にすることにしました。

『万葉集』に柿本人麻呂のふたつの歌が並んでいます。

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「葦原の 瑞穂の国は 神ながら
⭕️言挙げせぬ国 しかれども
⭕️言挙げぞ我がする言幸く
ま幸くいませと 障みなく
幸くいまさば 荒磯波
ありても見むと 百重波 千重波にしき
⭕️言挙げす我れは ⭕️言挙げす我れは 」

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「磯城島の大和の国は⭕️言霊の助くる国ぞま幸くありこそ」

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「言挙げせぬ国」「言霊の助る国」この対比が面白い!!

「言霊」も「言挙げ」も言語化です。

どちらかというと「言挙げ」の方が「言葉」の力があるように思います。

「言霊」は「言」に「霊」が備わったものです。ただ言語化しただけでは「言挙げ」です。

「ありがとう」という「言」に「ありがたい」という「霊」が備わったら言霊です。

「ありがとう」という言葉に「とりあえず言っとくか」という気持ちが入ればそれが伝わります。

これは「器」と「中身」のようなものです。

受け取るのは「中身」

「ありがとう」という言葉に「めんどくせぇ」が入っていればどんなに「ありがとう」という「器」を出しても「中身」の「めんどくせぇ」がやりとりされることになります。

⭕️「器」と「中身」がセットになって「言霊」

おおくの「言霊」と思っているものがそれほど力を持たないのは「ID」と「PW」のようにビシッと決まってないからです。だいたいこんな感じ、、、という「ID」と「PW」では効力がありません。ただ言語化しただけの「言挙げ」です。

ですから「言霊」は「器」だけでは「言霊」の力はありません。

「言挙げ」の方が「言葉」の力があるように思っているのは言葉にするだけでいいからです。

人を不快にさせること、わざわざ言わなくてもいいことを「言葉」にすること。

これは特に「器」に「悪意」を入れなくても「言葉」にするだけで効力を発揮します。これが「言挙げ」

⭕️余計な一言も「言挙げ」です。

一文字ごとに意味があるという迷信に近い信仰もありますが、、ジャガイモもニンジンもカレーに入れたら全部カレー味と同じように

ひとつひとつをこじつけるよりも言葉の器にどんな中身が入っているかの方が効力が大きいものです。

「言霊」は軽々しく扱うものではありません。IDとPWのように大切に管理して活用する必要があります。

「それって言霊ですね〜」という「言挙げ」に軽く同意しないことも必要になってきます。

「言霊」と「言挙げ」は同じようで全く違う世界観があります。

※柿本人麿社を参拝したときの画像です。

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森澤勇司(もりさわゆうじ) 能楽師小鼓方 1967年東京都生まれ。 テンプル大学在学中に見たこともない能楽界に入門し32歳で独立。 2000番以上の舞台に出演している。 43歳で脳梗塞で入院、 退院後、うつ状態克服のため心理学、脳科学を学ぶ。 復帰後は古典的な能楽公演を中心に活動している。 著書『ビジネス番「風姿花伝」の教え』 明治天皇生誕150年奉納能、 映画「失楽園」、大河ドラマ「秀吉」に 能楽師として出演。 2014年 重要無形文化財能楽保持者に選出される

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曲目目次

あ行 か行 さ行 た行 な/は行 ま/や/ら行
(あ)
藍染川

葵上
阿漕
芦刈
安宅
安達原
敦盛
海士
海人
嵐山
蟻通
淡路

(い)
碇潜

生田敦盛
一角仙人
井筒
岩舟

(う)
鵜飼

浮舟
雨月
右近
歌占
善知鳥
采女

梅枝
雲林院
(え)
江口

江野島

烏帽子折
絵馬
(お)
老松

大江山
鸚鵡小町
大社

小塩
姨捨
大原御幸
小原御幸
女郎花
大蛇
(か)
杜若

景清
花月
柏崎
春日龍神
合浦
葛城
鉄輪
兼平
賀茂
通小町
邯鄲
咸陽宮
(き)
菊慈童

木曾

清経
金札
(く)
草薙
国栖

楠露
九世戸
熊坂
鞍馬天狗
車僧
呉服
黒塚

(け)
現在七面

源氏供養
玄象
絃上
月宮殿

(こ)
恋重荷

項羽
皇帝
高野物狂
小鍛治
小督
小袖曽我
胡蝶

(さ)
西行桜
逆矛

桜川
実盛
三笑

(し)
志賀
七騎落
自然居士
石橋
舎利
俊寛
春栄
俊成忠度
鍾馗
昭君
猩々
正尊
白鬚
代主

(す)
須磨源氏
隅田川
住吉詣

(せ)
西王母
誓願寺
善界
是界
是我意
関寺小町
殺生石
接待
蝉丸
禅師曽我
千手

(そ)
草子洗小町
草紙洗
卒都婆小町
(た)
大会
大典
大般若
大仏供養
大瓶猩々
第六天
當麻
高砂
竹雪
忠信
忠度
龍田
谷行
玉鬘
玉葛
玉井
田村

(ち)
竹生島
張良

(つ)
土蜘蛛
土車
経正
経政
鶴亀
(て)
定家
天鼓

(と)
東岸居士
道成寺
唐船
東方朔
東北
道明寺

木賊
知章

朝長
鳥追船
鳥追
(な)
仲光
難波
奈良詣
(に)
錦木
錦戸
(ぬ)

(ね)
寝覚
(の)
野宮
野守

(は)
白楽天
羽衣
半蔀
橋弁慶
芭蕉
鉢木
花筐
班女

(ひ)
飛雲
檜垣
雲雀山
氷室
百万

(ふ)
富士太鼓
二人静

藤戸
船橋
船弁慶
(ほ)
放下僧
放生川
仏原
(ま)
巻絹
枕慈童
枕慈童(カ
松風
松虫
松山鏡
満仲
(み)
三井寺

通盛
水無月祓
身延
三輪
(む)
六浦
室君
(め)
和布刈
(も)
望月
求塚
紅葉狩
盛久
(や)
屋島
八島
山姥
(ゆ)
夕顔
遊行柳
弓八幡
熊野
湯谷
(よ)
夜討曽我
楊貴妃
養老
吉野静
吉野天人
頼政
弱法師

(ら)

羅生門
(り)
龍虎
輪蔵
(ろ)
籠太鼓