生きているうちにやりたい事
「生きているうちにやりたい事」
朝活で「やりたいことが見つからない」という話が出ました。やりたいことはやる必要がない、求められたことだけしているという人もいれば、仕事はどう見てもうまくいっているのに満足できなくてほんとにやりたいことはなんだろうとずっと考えている人もいます。
朝活では『聖書』の「民数記」エジプトを出た後のモーセも使命に生きているかもしれません。最近の「やりたい事」をやっているワクワク感のようなものはなくどちらかというと苦悩の人生です。
またまた思い出すのは三蔵法師。「大般若経」600巻をインドに求め翻訳したと言われています。
日本では人気の「般若心経」も三蔵法師の翻訳と伝わっています。私自身も泉岳寺の写経会に参加した時、三蔵法師の揮毫されたお手本で写経させていただいたことがあります。
子どもの時は架空の人物かと思っていましたが、、、、
『日本書紀』では斉明天皇の御代にこの三蔵法師が記載されています。
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斉明天皇4年7月
この月に、沙門 智通、智達、勅を奏わりて、新羅の船に乗りて、大唐国にゆきて、無性の衆生の義を⭕️玄奘法師の所に受く。
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能もそうですが、伝説と現実が交錯しているのがいいですね。
生涯をかけて大般若経を翻訳した伝説を描いた『西遊記』は日本でも有名です。児童書やドラマで馴染みがありましたが、原作の翻訳本はかなり長い物語です。
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『西遊記』
混沌いまだわかれず天地乱れ
茫茫、渺渺として人の見る無し
盤古、鴻濛を破りてより
開闢いて茲より清濁辨る
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『日本書紀』『古事記』とおなじ盤古神話から始まります。「開闢」も同じです。
ここから孫悟空の前世が描かれ、孫悟空になり、三蔵法師と出会ってと物語は進みます。
『ドラゴンボール』などアニメにもなり孫悟空だけが目立っていますが、、この登場人物の中で重要なのが沙悟浄です。
沙悟浄→深沙大王
この沙悟浄のドクロのネックレスは三蔵法師の何代にもわたる前世の首です。
自分の命を奪った沙悟浄をお供に連れているってすごいメンタルです😃
なぜか江戸時代の中期から上演がされていなかった能「大般若」の中に三蔵法師の前世が語られる場面があります。
三蔵法師の志を試すために七回命を奪ったことが語られます。
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『大般若』
深沙大王は、知ろしめし給ひつつ、七度まで命をとる。その魂をかれこれが、子と成り、師と成り、伴と成り、生を転じて今よりは御法の時も合ひに逢ふ。渡天もたやすく御経も今、授くるべしや御僧
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そう言われても実感のない三蔵法師は、そう云うあなたは誰ですかと質問します。
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今は何をかつつむべき。我、この川に棲んで年久しき深沙大王とは我がことなり。汝が前世七度まで障をなししも我ぞかし
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前世でなんどもインドに行こうとした三蔵法師の命を奪ったのは自分だと告白します。
そしてその志を確認できたので大般若経を託し守護神となることを約束します。
すごいテストですね!ドリームキラーなんてヌルいものです。
いろいろな場所で「今日が最後の日だったら何をする」というワークをしたことがあります。
何度しても朝起きて日課をして終わるしか浮かんできません。
学生の時の長距離走のようにラストスパートで全力疾走するのか??
逢うべき人はあってるし、逢えなかった人はご縁がないと思えば最後だからどうすることもなく普通の日常が送れたら最高という事ばかりでした。
この能「大般若」の約400年前の文章を入手した時、ああこれなんだなと実感しました。
能楽の流儀による組合せは一曲あたり3600通りあります。
これが250曲、演出の変わるものなど含めたら古典作品だけで軽く100万通りのスコア譜ができます。
私が今まで勤めたのは2000番、被っている組合せもありますから経験したのは1000パターンくらいでしょうか。
とてもこの人生だけで能楽の1000分の1くらいしか経験することもできない量です。
すなおに「何度か生まれ変わらないとできないなぁ」と思った時、なぜがうちから「やる気」が湧いてくるような感じでした。
レストランのフルコースを5分で食べてといわれたら、、いらな〜いという気分になりますが、ゆっくり味えるならひとつひとつを楽しみたい。そんな感じにもにています。
この一生だけではとても時間が足りない。7回生まれ変わって同じことに取り組めるなら不器用な自分でも少しは成果が出せそうな気分になれます。
いやいや輪廻なんてないですよと言われればそれまでですが、、
そしてこの三蔵法師の命を奪った沙悟浄→深沙大王は日本でも人気がありお祀りするお寺ができました。
それが深大寺
⭕️深、沙、⭕️大、王
省略か!!
そしてスーパーに行っても「深大寺そば」と書いたお蕎麦が並んでいます。
これが沙悟浄と通じていると思うと、、蕎麦にも功徳を感じるものです。
子どもの頃に好きだったものも大人になっていろいろつながってくる。この楽しみは今生だけでは味わいきれないですね〜
※画像はAIで生成しました。
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