【問】「風情」を表現するにはどうすれば良いでしょうか
【問】「風情」を表現するにはどうすれば良いでしょうか
曲の風情を表現したいと思っています。情感のあふれる小鼓を打つにはどうすれば良いでしょうか。
【答】基本の型をより稽古しましょう。
結論からいうと基本の型をより一層稽古しましょう。そして謡の稽古の割合を増やしましょう。このブログで具体例ではなく包括したご案内になりますが例外のない大切なことのみお伝えさせていただきます。
小鼓だけが風情を感じるよりもどんな場面なのかを感じていることが大切です。そして感受性の強い方は特に内面の表現に走りがちです。待っている役の心情も大切ですが、舞台装置の無い能舞台では風景の描写ということも大切です。
風情といっても「朝」なのか「夜」なのか「風」が吹いているのか「無風」なのか「明るい」のか「暗い」のか「月はどんな形なのか」。こうした舞台上には無い風景のイメージを鮮明にすれば小鼓を打つ手の動きはそれらしくなってくるものです。
首をうなだれて自然なスキップがしにくいように、またタメ息つきながら思いっきり力を入れてガッツポーズをするなどギャップのある動きは違和感を生みます。
謡の稽古で風情を感じて、小鼓はきっちり型を作っていく方が全体の様式美には貢献できると思います。またこれは実際にやってみて感覚で体得して行くものです。稽古場のご質問に対してお答えていますが実際に舞台で演じてみないと細部までは決められません。具体的な曲目、お相手、舞台の場所など決まったときに細かく稽古していきましょう。
「抽象的」な事を「具体的」な行為にする練習は有効です
日常てきにできる練習としておすすめなのが「抽象的」な事柄を「具体的」な行為にする事です。日本人は行為の中に祈りや願いを込めています。
例えば、稲を植える中に豊作を願う、筋トレの中に健康を願うなど行為があってはじめて祈りになる習慣を持っています。家でテレビを見ながら「筋肉つけよう」と思って神社で「筋肉がつく」ように祈って3年。それでは筋肉の成長は無いでしょう。家で腕立て伏せをする中に筋肉の成長を願って3年だったらだいぶ変化があるように思いますがいかがでしょうか。
◆おもいやり→席を譲る
◆礼儀→「おはようございます」と丁寧に発音する
◆喜び→はがきを出す
上記のように具体的な行為にしてみると、「謡の抽象的な言葉」も「具体的な行為」として語られていることが見つかるようになってきます。仏教の諸法実相の通り、具体的なものがあってはじめて抽象的な世界観が表現されます。
逆に言えば、具体的な行為無くして、内包された祈りというものは無いのが能楽全般の台本構造です。想い内にあれば色外に現るという通り行為と想いはセットにする習慣がおすすめです。
理想の能楽生活を楽しめるようにお祈りしています。
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