「秘すれば花」と自己開示欲求
「秘すれば花」と「自己開示欲求」
本日の朝活は『源氏物語』東屋、『日本書紀』顕宗天皇、『聖書』士師記
今日は総合してみると「秘すれば花」という言葉が浮かんできました。
『源氏物語』東屋→光源氏の子 薫が浮舟に心を寄せているが身分の違いでためらっている。
『日本書紀』→顕宗天皇は自分の父親を殺害した雄略天皇の陵を復讐のため破壊しようと思っているが表面的には徳のある天皇として振る舞っている。
『聖書』サムソンとデリラ
浅田真央さんや安藤美姫さんが大会で使用した楽曲「サムソンとデリラ」の元になった物語です。
力の強いサムソンは自分の弱点をデリラに教えてしまいます。
「ノアの方船」「モーセの出エジプト」どうよう様々な作品になっている物語です。
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「デリラは彼に言った。「あなたの心はわたしにはないのに、どうしてお前を愛しているなどと言えるのですか。もう三回もあなたはわたしを侮り、怪力がどこに潜んでいるのか教えてくださらなかった。」 来る日も来る日も彼女がこう言ってしつこく迫ったので、サムソンはそれに耐えきれず死にそうになり、⭕️ついに心の中を一切打ち明けた。「わたしは母の胎内にいたときからナジル人として神にささげられているので、頭にかみそりを当てたことがない。もし髪の毛をそられたら、わたしの力は抜けて、わたしは弱くなり、並の人間のようになってしまう。」」
士師記 16:15-17 新共同訳
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元祖ハニートラップともいえる物語ですが、相手は美味しい話を示しているのではなく、痛めつけるためにはどうすれば良いのかと毎回聞いています。
甘い声で囁いていたかどうかはわかりませんが、自分にとって都合の悪いことも何度も聞かれているとなんだか知って欲しい気分になる人もいます。
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「デリラはサムソンに言った。「あなたの怪力がどこに秘められているのか、教えてください。あなたを縛り上げて苦しめるにはどうすればいいのでしょう。」」士師記 16:6 新共同訳
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カリギュラ効果と呼ばれている心の作用もあります。
強く禁止されると話したくなってしまう。
「王様の耳はロバの耳」みたいなものです。
都市伝説や日本の成り立ちも似たなところがあります。
公開されている公式記録よりもマイナーな亜説を信じてしまったり話したくなってしまったり
多くの人が信じない説の方が本当だと思う人も一定数います。霊感商法に引っかかりやすい人もカリギュラ効果には引っかかりやすいものです。
サムソンも知られたら酷い目にあうことは想像ついたかもしれませんが、自分の事を知って欲しい欲求もあったかもしれません。
サムソンも「毎日、ジムで目標立てて鍛えてるよ!!」と言っていれば酷い目には合わなかったかもしれません。
多くの人は特別と思われたいかもしれないし、何かすごいこと知ってそうと思われたいような欲求があります。
毎日、努力しているより、神の啓示を受けて秘密の力をもった方が特別っぽいものです。
秘伝というのはサムソンのような人から漏れるものです。
思ってもいない人に禁止という形で知恵を与えてしまうこともあります。
高校の時、近くの駄菓子屋さんが授業を抜け出した時のたまり場になっていました。私はまったく知りませんでした。
ある時、ホームルームのときに担任の先生から注意がありました。「壁を乗り越えて〇〇屋さんに行かないように」
その時、私の頭には「へ〜、壁乗り越えて行くとたまり場にできるところがあるんだ〜」と新しい情報が入ってきました。
このように禁止よのようで広めてしまっていることが結構ありますね。
これについては世阿弥も「秘すれば花」という言葉を残しています。もし守るべき秘伝があるならば、それがあるということも人に見せない。
習わないとわからない秘伝というのは多いものです。謡よりも遅れ目に打つような秘伝があっても見ただけでは「動き」なのか「音」なのか「目つき」なのかと的外れなことを観察してしまいます。
サムソンも「秘すれば花」と同様
「鍛えてるだけでなんの秘密もありません。」
そう言っていたらペリシテ人も「そりゃそうだ」と納得したかもしれないですね。
自己開示欲求が高まる要因に酒があります。
能「紅葉狩(もみじがり)」ではこのように言っています。
「ことに飲酒(おんじゅ)を破りなば、邪婬、妄語ももろともに」
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『超訳 世阿弥』より
110秘伝があることも見せない
「秘すれば花、秘せずは花なるべからず」と言う。この秘するかどうかの分岐点を知ることが重要なのだ。なぜなら、多くの秘事は秘密にすることで機能するようになっているからである。⭕️そのため秘密があるということを公開してしまってはすでに秘密とは言えない。聞いただけでできるわけではないから別に知られてもかまわないと言う人は秘密の重要性をわかっていない。
戦に例えると名将の作戦によって敵が予想しない方法で勝利することがある。秘事というものは家に一つは残しておくものなのだ。
秘密があるとわかっていれば人は対応策を考える。知らないよりもさらに答戒心を強めてしまうことになる。相手が対応策を準備しているならばつことの難易度は高まるのだ。心の準備をさせずに勝つことが必要だ。
秘すれば花、公言しては花にはならないのだ。『風姿花伝』
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画像はAIで生成しました。
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