古語の謎
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朝活読書 vol.128 2011年1月20日配信
『 古語の謎 』
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◆《1》今日の一言
◆《2》今日の一冊
◆《3》編集後記
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◆〈1〉今日の一言 #128
「清濁?」
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◆〈2〉今日の一冊
『 古語の謎 』
書き替えられる読みと意味
白石良夫 著
中公新書
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著者 白井良夫さんは1948年生まれ。
文部科学省を定年退職し、現在、
佐賀大学教育学部教授です。
昨日の林望さんの著書に引き続き
強く共感した一冊です。
日頃思っている事を伝えるべき語彙の
少なさに歯がゆい思いをしています。
「日本語の磨きかた」「古語の謎」は
その思いを代弁していただき、
しかも本になって目の前に現れたような
快感を得ながら読むことができました。
ひむがしの 野にかぎろいの 立つみえて
かへり見すれば 月かたぶきぬ
アズマノノ ケブリノタテル トコロミテ
カヘリミスレバ ツキカタブキヌ
東野炎立所見而反見為者月西渡
これらは本当はどう読んだのか
という考察から始まります。
この読み方はアララギ派の歌人たちにも
影響を与えていると著者は語っています。
「鈴虫は今の松虫」
「こおろぎはいまのきりぎりす」
などの研究にも紙面を割いていますが
「虫の鳴き声を歴史的に解明する、
この試みは徒労以外の何物でない。」
ばっさり切り捨ている姿勢も
共感できます。
「研究対象のスケールと研究者のスケール」
自分のこだわりや研究を、語る際の
心構えの書としても参考になります。
古典作品の作者自筆本は
なぜ残っていないのか
桧垣媼の像、金印の贋作疑惑など
本編は興味深い記事満載です。
ぜひ読んでください。
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◆〈2〉編集後記
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今日もありがとうございます。
森澤勇司です。
読書中に歌謡曲が百年後の古典に
なったらどうなのかという事が
浮かんできました。
能楽に限らず古典の研究書を読んでいると
「歌」という意識が薄いように感じます。
詞の意味も大切ですが音楽として
考えたほうがすっきりするところも
多いのではないでしょうか。
和歌は七五調ですがどういう発音で
「詠んでいたのか」という事が
分からなければテキストとして
読んでもピンと来るものはありません。
音程、リズム、詞の内容、韻、など
どれが欠けても気持ちよくはないと思います。
1977年にヒットした「あづさ2号」の
歌詞を2011年の現在、今の列車事情に
合わないという理由で歌詞を
「スーパーあづさで~」
などと変えてしまったり、
サザンオールスターズの
「勝手にシンドバッド」
の冒頭の歌詞
「ラララ・・・」は
波の音としてはおかしい
「ザザザ・・・」
またまた
「ちょいと」
は前後の文法や当時の用法として
「ちょっと」
ではないか
などと直してしまったら
気持ちよくないと感じる方は
多いのではないでしょうか。
古典の研究は半分以上、このような
考察なのではないかと思っています。
たかだか30年ほどでも
こんな例は枚挙に暇が有りません。
後70年後、今生まれた赤ちゃんが
70才になるときには100年前の
歌になるのです。
和歌は歌であり歌謡曲でいったら
歌詞の部分です。
当時の発音でふまれた韻、
旋律やリズムというものも
考慮すべき重要な要素だと思います。
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古語の謎―書き替えられる読みと意味 (中公新書)/白石 良夫
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