ミイラはなぜ魅力的か
- ミイラはなぜ魅力的か―
最前線の研究者たちが明かす
人間の本質/ヘザー プリングル
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あなたもできる!朝活読書。
vol.224 2011年4月26日配信
『ミイラはなぜ魅力的か』
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▼《1》今日の一言
▼《2》今日の一冊
▼《3》編集後記
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▼〈1〉今日の一言 #224
「あなたにとって語るとは?」
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▼〈2〉今日の一冊
『ミイラはなぜ魅力的か』
ヘザー・プリングル 著
鈴木主税
東郷えりか 訳
早川書房
アマゾン
http://t.co/UfIlKEe
楽天
http://books.rakuten.co.jp/rb/1447243/
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著者 ヘザー・プリングルさんは
1952年カナダ生まれのサイエンスライターです。
世界で様々な「会議」「学会」が開催されています。
その中でも3年に一度開かれる「ミイラ会議」で
発表された内容をまとめた一冊です。
弓鋸とアーミーナイフで大量のミイラを
解体する病理学者、
ミイラの消化器官から寄生虫を探す人類学者、
中国で発見された4000年前の白人のミイラ、
いけにえにされた少女たちのミイラ、
それらミイラになった人間がどう
扱われてきたのかも語られています。
万能薬や絵の具、博物館の呼び物として
宗教、政治などに利用された例をはじめとして
即身成仏やレーニンの遺体など
腐敗と破壊から「生き延びた」
ミイラの話が凝縮されています。
●この本を一言でいうと
「語る」です。
●おすすめのポイント
この中に語られている中から
二つの例を紹介したいと思います。
「イギリス海軍」と「誤訳」についてです。
ナポレオンの時代、イギリス海軍の
英雄ホレイショー・ネルソン提督(1758~1805)が
トラファルガー海戦中に亡くなったときの事です。
隊員たちは悲しみ本国に遺体を持ち帰るために
ラム酒の樽につけたそうです。
ところがこのラム酒の樽は本国に帰る前に
空になっていたそうです。
盗み飲んだとか、自分に取り込もうとした、
蒸発したなど諸説あるようですが
樽の中からきえてしまったのは事実のようです。
もう一つ誤訳の話です。
ヨーロッパではエジプシャン・ブラウンといって
ミイラを粉砕して作った褐色の絵の具が
大流行した時期が有ったそうです。
そのミイラ貿易が誤訳によって始まった
経緯が記載されていました。
アラビア語の医学書を翻訳するときの
勘違いが原因という説が紹介されていました。
瀝青(タールのような物)に関する記述だそうです。
中世アラビアの医師はこの瀝青を治療に使う事を
好んだようです。
中でも効果が有るとされていたペルシャの天然アスファルトを
「ムミヤ」とよんで珍重したそうです。
ヨーロッパの翻訳者はこの「ムミヤ」がわからずに
知識に応じたそれぞれの解釈で訳していたという事です。
その中でも12世紀の翻訳者
クレモナのジェラルド(1114~1187)は
エジプトの遺体処理に瀝青が使われる事を
古典を読んで知っていた博識な人でした。
「沈香を塗った死体から染み出る体液と沈香が
混ざり合って変質したもの」と訳したため
「ムミヤ」は防腐処理を施された死体から
取れるものという常識が広まったという事です。
十字軍の遠征で直接ミイラ薬を体験した
兵士たちの評判からミイラ商人が
活躍することになったのです。
巻頭にミイラの写真も多数掲載されています。
●生活への活かし方
人間の本質とは何か
自分の常識がどれだけ環境に影響されているか
確認することが出来ます。
ぜひ読んでください。
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▼〈2〉編集後記
今日もありがとうございます。
森澤勇司です。
新聞やニュースで殺人事件が有ると
私たちはこんな風に思います。
「人間としてゆるせない」
「信じられない」
しかし行為だけを切り離してみてみると
英雄と犯罪者は似ている
部分が多いようにも思えます。
「理由」があれば犯罪は正当化されます。
戦争もそうだと思います。
もしかしたら私たちが求めているのは
行為を正当化する「理由」かもしれませんね。
「あなたにとって語るとはどんな意味ですか?」
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