宮本武蔵の語る演奏の心得【高砂】
喜多能楽堂竣工祝賀能
1年かけて改修された喜多能楽堂で能「高砂」を勤めました。
「高砂」は宮本武蔵 著『五輪書』の中にも演奏の心得が語られています。
宮本武蔵は細川家にいたので喜多流、金春流の能をかなり見ていたようです。
そんな「高砂」から連想する事を綴ってみます。
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皷・太鼓に「老松」をうつに、静かなる位なれ共、下手は是にもおくれさきだつ心あり。
「高砂」は急なるくらいなれども、はやきといふ事悪しし。はやきはこけるといいて間にあはず。
勿論、おそきも悪しし。是も上手のする事は緩々(ゆるゆる)と見へて、間のぬけざる所也。
諸事しつけたるもののする事は、いそがしく見えざる物也。此たとへをもつて、道の理をしるべし。
殊に兵法の道におるて、はやきといふ事、悪しし。
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「諸事しつけたるもの」
今は「しつけ」というとマナーやエチケットのようなイメージが強いです。
宮本武蔵の語る「しつけ」とは「熟練」です。身につけてマスターしていること。
熟練した人は汗かいて「やってまーす」というアピールがなくスッとこなしてしまう。
何事もそういう境地にいきたいものです。
世阿弥は宮本武蔵に先立つ事200年以上前に著作『曲付次第』の中で近い事を語っています。
「至て深きは浅きに近し」
簡単にやっているように見えるまでやるのがいいようです。
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153極めると簡単にやっているように見える
言葉のアクセントに似合わない節付けにはよく注意すること。
文字のアクセントを活かす節付けをするには、よくよく音曲を極めた人に相談することが大切。そして何度も確認して節付けを決めていく。
「至て深きは浅きに近し」本当に深く習得していると簡単にしているように見えるという。
注意を行き届かせることで、簡単に物事ができるようになるのだ。『曲付次第』
『超訳 世阿弥』より
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