【古天文学】斉藤国治 著
vol.300 2011年7月11日配信
『古天文学』
斉藤 国治 著
恒星社
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『日入直前の皆既食であるから、食された太陽は
地平ちかく、これを見る人に壮絶な感を
与えたことは確かである。』
本文より
▼「どこから見たのでしょうか?」
古文献に記録された天文現象を実証し
その時の星の配置を再現しさらに
その計算方法のヒントになるプログラムも
掲載された一冊です。
日食、月食、天体の集合など空を見て
何かあると感じた星の配置がどうだったのか
歴史好きの方には興味深い例が
取り上げられています。
また日本国内にとどまらず、
旧約聖書のなかの日食、始皇帝の見たハレー彗星、
「バビロン王朝第10代カンビサス王の第7年秋10月の
後半に、金火木土の4惑星が
暁の東天に集合して見えた。」
という粘土板櫛形文字に記載された空の再現、
太平記の中の三星集合という歴史の中の星の配置が
図で解説されています。
天岩戸伝説が日食だと仮定するとどんな日食だったか
という考察は非常に興味がわく内容でした。
また全世界で18年に10回あるという日食が、
観測点を限定すると
360年に1度と絞られることを前提に
西日本で起こった日食を特定しています。
紀元2世紀から6世紀までの間での4回の日食が有ります。
A.D.158八月十三日 近畿地方を斜断
A.D.248四月五日 能登と奥羽地方を横断
A.D.454八月十日 九州中部を横断
A.D.522六月十日 山陰、近畿北部を横断
それぞれ奈良、継体天皇、北九州ヤマタイ国、出雲地方
など想像を掻き立てられる候補地の記録です。
この中でもA.D.158年の奈良盆地を観測点とした
日食は印象深く8月13日の17:59分から起こり
18:55分に完全に隠れ
19:11分に7割ほど日食したまま日没したそうです。
「見る人に凄絶な感を与えたことは確かである。」
と著者も語っています。
この伝説の筆者はどこでこれを見たのでしょうね。
その他、歴史の節目に陰陽師や天文学者、
占星術師たちがみた星の様子を知ってから
古典を読むとだいぶ身近な感じがしてきます。
ぜひ読んでください。
_____
▼編集後記
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
今日もありがとうございます。
森澤勇司です。
この本の中に源平盛衰記「水島の合戦」の
日食という図解もありました。
1183 11月17日
寿永2年閏10月1日
「日の光みえず、闇の世の如くなりたれば、
源氏の軍兵ども日蝕とは知らず、、、」
中国の西半分と四国のほぼ全域を通過した
金環食だということです。
水島の位置と金環食影なので
「闇の世の如くなりたれば」
は誇張しすぎだと著者は解説しています。
物語を作った人が自分で見たわけでは
無いかもしれませんね。
そもそも目が不自由で
聞いただけなのかもしれないですよね。
来年2012年5月21日四国の同じような場所で
この金環食が観測できるそうです。
この時期、四国方面に行ける方は
観測してみてはいかがでしょうか。
「どこから見たのでしょうか?」
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